辻イズム

辻H&Bサイエンス研究室について

目的・研究体制

研究体制

辻H&Bサイエンス研究室は、2011年に三重大学生物資源学部および地域イノベーション学研究科の協力支援を受けて、三重大学内にキャンパスラボとして設置・開設されました。

この研究プロジェクトは三重大学と中心に展開していますが、他大学や他の研究機関との共同研究の連携も持って、分野を広げた実践も挑戦しております。

また、学内に研究室を開設することで、学生やポスドク等を研究の場に参加してもらうことで、企業社会において即戦力として活躍が期待できる研究系人材の育成も目指しています。


目的・研究題目

地元の大学研究機関と共に共同研究を実施することで、「企業による製品開発に大学の研究機能を活用することで、地域産業界の活性化に寄与する有効な研究成果を創出すること」を実証する目的として活動を行っております。

具体的な研究題目としては、辻製油㈱がこれまでに開発した製品や素材について、医食同源や予防医学に観点から近年食品や食習慣に求められる生理機能性についての学術的エビデェンスの獲得、そしてこの成果を学会や学術誌による知見・情報の発信を行う、さらに辻製油㈱の製品開発技術について、学術的な探求に加えて、地産地消を目指した研究テーマを取り上げ、大学と辻製油㈱が機能補完して連携することで、辻製油㈱からの新製品創出につながる研究開発を目指しています。

研究成果・実績

これまでに辻製油㈱が開発を行った製品や食品素材について、見出された生理機能性の結果について幾つかをご報告致します。

天然脂溶性抽出物の骨代謝改善効果について

しょうがの食品加工の際に発生するしょうがの皮から有機溶剤を使用して抽出を行った天然抽出物、同じく柑橘類の温州みかん、セミノールの果汁加工から発生する果皮から同様に処理を行った抽出物に生体内で骨代謝を調節する骨芽細胞ならびに破骨細胞への作用応答を確認致しました。骨芽細胞の培養時にしょうが抽出物を加えるとカルシウムの沈着誘導を促進する結果が得られました。また、分化誘導を行った破骨細胞にしょうが抽出物を作用させると細胞融合を起こし、成熟細胞への成長を抑制する効果が確認されました。また、破骨細胞の分化成熟抑制については、柑橘類からの抽出成分でも効果が確認でき、柑橘類に含まれるポリメトキシフラボノイド類がこれらの作用効果に大きく影響することを見出しました。

これら結果は骨粗鬆症の疾患に伴う過剰な骨組織の溶解を制御できる可能性が期待できます。


天然脂溶性抽出物の肥満作用の改善効果について


しょうがの皮から有機溶剤を使用して抽出を行った天然抽出物が肥満細胞の分化モデルの細胞評価において、良質な肥満を誘導する生理機能性を確認致しました。マウス3T3-L1細胞から分化誘導される白色脂肪細胞への評価系で、しょうが抽出物を作用させると分化した脂肪細胞において脂肪滴の蓄積状態、良質な肥満の維持や脂質代謝に関連するアディポネクチンやGlut4遺伝子群の発現増加が確認されました。また、生活習慣病の代表である糖尿病のインスリン抵抗性に大きく関連するサイトカインの一つTNF-αの影響下での評価でも脂質・糖質代謝に関連する遺伝子の発現低下を抑制する効果も得られています。現在、肥満細胞への分化誘導において、脂肪蓄積ではなく脂肪燃焼による熱エネルギー生産に関わる褐色様脂肪細胞との関連性にも注目し研究を進めています。

健康機能性油脂について

従来の油脂製品の開発においては、酸化安定性の向上を目指して開発を取り組んできたものが多いですが、油脂に含まれる天然の抗酸化物質であるトコフェロール(ビタミンE)を多く含むように研究開発した製品を誕生させました。キャノーラ油をベースにしたこの製品は「Naga-Mochiキャノーラ」として上市されています。

この製品に多く含まれるγ-トコフェロールに注目し、生理機能性の追求を目的に試験動物ラットをモデルに食餌を行った結果、尿排出量の増加、また、高塩分摂取時に過剰な食塩の排出促進効果が確認されました。この結果はγ-トコフェロールの生態代謝物が利尿作用を誘導し、導かれた現象と考察しております。日本人の栄養指導においても未だ過多の食塩摂取が問題となっておりますが、このような健康志向が期待される油脂を調理に用いて、食生活の楽しみを損ねることなく、体質の改善が図れることを目的にこの作用面の追及を目指しております。


研究活動・報告など

基礎研究の成果をもとに様々な独自製品を開発しております。